『飢餓海峡』は作詞家の吉岡治先生に「水上作品を歌にできないか」とお願いして生まれた曲のひとつです。またその後、石川さゆりが確立していく「歌芝居」のはじまりとなった思い入れの深い作品でもあります。水上先生の原作は青函連絡船洞爺丸沈没事故に想を得た、社会派ミステリーの傑作。そこに登場する杉戸八重には、そこはかとなく業の匂いがします。一方、吉岡作品に描かれた女性はいやしさのない、一途な女性。それぞれ違う角度から描かれた女性像を歌い手である石川さゆりが表現するという試みでした。原作、映画、歌と表情の違う女性像を見比べながら、どう読み解くか。見る人の受け止め方で完成するエンターテインメントといえるかもしれません。

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いしかわさゆり

石川さゆり

歌手。熊本県生まれ。1973年のデビュー以降、「津軽海峡・冬景色」、「天城越え」、「能登半島」などヒット曲多数。NHK「紅白歌合戦」では紅組最多の41回の出場を誇る。124 枚目のシングル『酒供養~縁歌バージョン~』も好評。「和の心」を基に尽きせぬ歌への好奇心で常に新たな音楽を紡ぎ出している。近年はジャンルに捉れない、さまざまなアーティストとのコラボレーションが話題に。

平成最後の年、2019年3月20日には日本の音楽「民謡」をモチーフにしたオリジナルアルバム『民~Tami~』を発表。日本のみならず、世界からも注目を浴びている。2007年12月 文化庁芸術祭大賞、2018年3月、芸術選奨文部科学大臣賞をはじめ、受賞歴多数。

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