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KIGI×BUH Talk:01

キギ

よしえさん、うえさん、どんな本を読んできたのですか?

2012年に滋賀県の職人と共同で立ち上げたブランド「KIKOF」が人気のKIGI(キギ)。植原亮輔さん、渡邉良重さん2人のユニットです。「PASS THE BATON」「シアタープロダクツ」などのグラフィックはもちろん、ブランド開発から広告のコミュニケーションまで一貫して手がけている沖縄のプロジェクト「琉Q」など、デザインの力で世の中にたくさん素敵なものを送り出しています。

 

Talk:01 KIGIうえさんの本と思考、アイデアの出し方


 

 

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そもそも2人って仲いいんですか?

【 BUH 】:植原亮輔さんはうえさん、渡邉良重さんはよしえさんって呼んでいいですか、はい、いいですね(笑) 今日はお2人に50冊ずつ100冊の本を選んでいただきました。なぜこれを選んだか、とかいろいろお話を伺います。
まずはじめに、気になっている人も多いかなという質問をHotchkissが世の中を代弁して聞きます。よくケンカをしているという噂も聞きますが(笑)

 

【植 原】:しますよ、よく。

 

【良 重】:なじり合ったりはしないですけどね。時々言っちゃうことはありますが。

 

【植 原】:会議室のすみっことかで言い合いになって、そのあとみんなでご飯食べに行ってもしゃべらない、みたいな。そういうのはあります。

 

【良 重】:まぁ色々ですね。くだらないっちゃくだらないかなと。

 

【 BUH 】:ケンカするほど仲がいいと言いますしね。閑話休題では本題に移ります。

 

衝撃の思い出ドラえもん11巻

【 BUH 】:まずここになんと、『ドラえもん』の11巻が。なぜに11巻なのでしょうか。

どらえもん

【植 原】:ドラえもんが好きで小学校 1、2年の頃よく読んでいましたね。で、学校の「帰りの会」の最中にこの11巻を読んでいたら、先生に見つかってとられてしまって。次の瞬間、こうまっぷたつに!破かれたんです。

 

【一 同】:すごい(笑)

 

【植 原】:でもすごくいい先生だったんですよ。後からきちんと謝ってくれたし。

 

【良 重】:じゃあ、先生もちょっと衝動的だったんでしょうね。

 

【 BUH 】:内容じゃないと(笑)

 

【植 原】:とはいえ、ドラえもんにはいろいろ道具があるんですよ。道具言えます?10個くらい。

 

【 BUH 】:ツーカー錠なんてどうでしょう。お互いにカプセルを飲むとふたりの間で意思疎通ができちゃう薬なのですよ。頭の中で思っていることが出ちゃうから、言っちゃいけないことがこうどんどん大きくなり大げんかになるやつです(笑)

 

【植 原】:…よしえさん、もしかしてドラえもんまったく読んでない?

 

【良 重】:読んでいません。

 

【 BUH 】:まったく?ではよしえさんとマンガの出合いは?

 

【良 重】:歯医者さんとかお医者さんにいくと待合室だいたい少年マンガが置いてあって。そういう時に、『ハレンチ学園』を (笑)本当は少女マンガが読みたかったんですけどね。小学校中学年くらいは、連載の月刊少女マンガ誌を読んでいました。

 

【 BUH 】:ここに『悪たれ巨人』が….。

 

【植 原】:これも僕です。子どもの頃、ゴミ捨て場にすごくたくさん置いてあって。それをごっそり持って帰って、一気に読み切りました(笑)

 

【 BUH 】:出合いがゴミ捨て場。

 

【植 原】:これ、活躍している実際の選手とかがでてくるわけですよ。 今思えば何が面白かったかちょっと覚えてないのですが、とにかくよかったわけです。すごい魔球とか使いますしね。あの『巨人の星』の二番煎じだと思うのですが、僕はあまりはまらなかったので、これを見て新鮮に感じたんですよね。

 

【一 同】:(笑)

 

思春期、ファッションに目覚めた『キャプテン翼』

 

【植 原】:つぎが『キャプテン翼』ですね。元々野球少年だったんです。でもこの「翼」登場とともに、サッカーに転向しようと思ったんですよ。 小学校5年生の頃、当時まだファッションとか意識していない時期に、友だちがこの翼を見て、登場人物若林の格好をしはじめたわけ。 ジャージ着て、アディダスの帽子を被るっていう。もちろん被り方を似せてね。それをかっこいい!と。憧れていろいろマネしはじめたんです。日向小次郎の、腕をまくるTシャツの着方とかマネしたり。

 

【 BUH 】:はいはいはいはい(笑)
さてうえさん、このマンガがいつから、美術書とか写真集になっていくんでしょう?

 

【植 原】:それは『ドラゴンボール』なんです。そもそも『ドラゴンボール』が終わるときはマンガが終わるときだと思っていましたから。

 

【一 同】:(笑)

 

【植 原】:他に読むマンガがなくなるくらい面白すぎて。やっぱり絵もうまい。ドラゴンボールの連載が終了したのが高校生くらいで、その頃にちょうど札幌の美術の予備校に通いだしたんです。 それがドラゴンボールから美術書へのスイッチの時期でした。そのきっかけが『バザールでござーる/デザインの現場63号』(1993年)。 出会ったわけです。衝撃的でしたバザールでござーるは。予備校には、デザインの現場とか美術手帳とか色々あって、のちに電通に入社した友人がこれを 持ってきて「すげーよ!」と教えてくれたのです。 『デザインの現場』は1号1号内容を覚えています。

 

【 BUH 】:なるほど。うえさんの転機は『ドラゴンボール』と『デザインの現場』というわけで。

 

うえさんが、本を読み切らないわけ

 

【 BUH 】:では、大人になり日頃の仕事の中で、アイデアを出す源泉としての本ってありますか?

 

【植 原】:僕の場合本は、かっこ良く言うと「想像への扉」みたいな感じです。

 

【一 同】:(笑)

 

【良 重】:この人はそんなに本を読まないんですよ。

 

【植 原】:一章の段階で本閉じちゃうんですよ。読み切らないっていう。

 

【良 重】:扉は扉なんです。確かに、出会ってから、本読み切ったのをあんまり知らない。

 

【植 原】:読み切ったことを時々自慢するくらいですから。小説に関しては、子どもの頃に親から読め読め読め読め言われたので、逆に読まないっていう風になっちゃったんですよ(笑)

 

【 BUH 】:例えばその小説だったら、最初の何章かを読んで、そのさわりの世界観がヒントになるということはないですか?

 

【植 原】:ほぼないですね。 ビジュアルを見て例えば、この人はどう考えてるんだろうなってことをつきつめて想像して、考えの「根本」に想像で出合うわけです。じゃあ俺ならこうしようかなって。 だからたぶん建築を見て建築の構造をそのまま受け取るのでなく、面白さの構造を把握して置き換えてみようと。
ただ、デザインの現場が多いのはそういうことを吸収する時期ももちろんあって。それが予備校時代とか大学時代でしたね。ADC年鑑をものすごく見ていました。

 

美の構造、アイデアの構造を知る思考訓練

【 BUH 】:その考え方を読み取る―その人がアウトプットの根本にある考えをくみとる―ようにできるようになったのはいつからですか?

 

【植 原】:多摩美時代、絵を描いていた時にいちいち悩んだんです。 色塗るのもすごく悩み、ある時、悩むくらいだったら塗って消してもう一回塗れば良かったのに…と思ったのです。 それは単純に言うと怖がっているだけだった。 怖がらなくなる、悩まなくするにはどうしたらいいんだろうって考えたんです。 そしたら、物事にはすべてに美しさの構造があるんじゃないかって気づきまして、それが『クリムト』。
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絵を描く上で、黄色の表現って、とても難しいのです。クリムトは実際は、黄色だけでなく金色もを使ってるかもしれないけれど、でもこのグレートアーティスト上では黄色なんですよ。黄色のグラデーションの幅で表現している。それを見た時に美しさの構造ってあるなと思って気づきました。

 

【良 重】:初めて聞いた

 

【一 同】:(笑)

 

【植 原】:黄色って、ちょっと混ぜたらすごく汚い色になる。その幅をどうやって作っているんだろうって研究して、美しさには構造ってものがあるんだって気づきました。 そこからDRAFTに入社して、D-BROSの仕事を始めてから、今度はアイデアの構造の設定を考えるようになった。
 
アイデアっていうのはどんなことなのかなってことを追求したんです。 そうすると欲望からきているな、と。人間の欲望っていうか、欲求というものがまずあって、それにより美しいとかおもしろいとかハマっちゃうんです。はたまた、なんか気持ち悪いけど好きとか、そういうところからアイデアっていうのは引き出されるんだって気づいた。 そのアイデアの方程式みたいなのをいくつか作って。例えば「ギャップ」。「堅いと思ったら柔らかい→驚く→面白い」そういうことです。 あとは、「密度」っていうのも惹かれる条件の一つ。 「箱庭」もそう、ドールハウスとかミニカーとかをみんなが好きなのは単純にもう神の視点に立っているから。 人間はみんな向上していきたいっていう欲望があるのは神に近づきたいという欲望があって、俯瞰して眺めると世界を覗き込んでいるみたいで気持ちがいい。これは支配欲からきているんじゃないかな。
 
あと、人間には目があるけども、自分を決して見ることはできないですよね。つまり、コミュニケーションすることによって人から見られて自分を見ている。 そういうことを色々考えるようになり、アイデアの構造をつくることの訓練をはじめたのです。こういうことをノートにひたすら書いて、何冊も何冊も書いて、同じことを何度も書いて、それで脳みそに焼き付けていった。 それで頭にアイデアというものを慣らしていったんですよね。考える方法を慣らしていったというか。

 

【 BUH 】:そのこと自体を本に書いてください(笑)

 

【植 原】:それが難しいんですよ。そう思っていた時に出合ったのが、この「ファンタジア」。結構同じことを思っている!と思ったのです。
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【良 重】:だから「あんまり読みたくない」って言っていたよね。

 

【植 原】:だからこれもぱーっとしか読んでない。最初の方は結構読んだけど、中盤以降は流し読み。自分で学びたいので、人から方程式を押し付けられたくなかったんです。

 

【 BUH 】:なんか逆に強すぎる影響は嫌なんですね。自分で考えたいから。

 

【植 原】:積み上がってる自分の理論がなんか違う風に置き換えられちゃうと、分かんなくなってきちゃうじゃないですか。研究中です。

 

【 BUH 】:今もノートに?

 

【植 原】:29歳くらいから33歳くらいまでは結構やってました。ダーって思いついたものを何枚も何枚ものページに渡って文字書いて。で、その頃にこの本に出会ったんです。

 

【 BUH 】:なるほど『海馬』

 

【植 原】:これは助けられましたね本当に。ちょっと体調が思わしくない時期が1年ぐらいあって。自分は脳みそがおかしいぞと思いこの本を読んだら、なんだ単純なことなんだなと思ったのです。
 
ジーンズってシワがついたらどう座っても同じシワがつくんです。座りかたで。脳も同じなのです。信号が送られていって習慣化する。ということは、その信号を切ればいいんだと思ったんです。ある条件が整った時に、自分の脳みそが「不安」とか「つまんない」とかそういう信号になる前にその信号を切ろうと。生活の中で、自分のコンディションが悪くなる前に、他のことにのめり込む仕組みを作ったのです。そうしたら、いろいろなことが好転した。

 

【 BUH 】:回路を切る、こうやれば切れるっていう経験ができた。

 

【植 原】:いっぱい作ったんです。例えば連ドラにハマるとか。

 

【一 同】:(笑)

 

【良 重】:あとヨガじゃない?

 

【植 原】:ヨガはもっと後。巨人の応援とか。

 

【良 重】:ワールドカップも。

 

【 BUH 】:ハマることが大切なんですね。

 

【植 原】:とにかく一度、自分のルールじゃなくて他人のルールとかなんかのルールに乗っかっちゃえばいいんですよ。

 

【 BUH 】:ずっと自分のルールだけで生きるのって、結構しんどいですよね。

 

【植 原】:そうなんです。それをこの本が教えてくれた。自分にとって衝撃的に影響を受けた本なのです。

 

【 BUH 】:次は『生物と無生物のあいだ』ですね。

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【植 原】:「エントロピー増大」って概念を中で説明してるんですけど、それは要するに、熱いお湯と冷たい水が混ざった時に温度の移動があって、結局ぬるい水になる。しかも空気とも混ざり合って同じ温度になる。 そういう飽和状態みたいな法則が人間にもあって、例えば部屋が散らかり出してくとどんどん散らかる方向に行ってしまって、止まっちゃう。 ただし、人間は”散らかり”を止めることができる。だから人間にとっても悪い方に向かうことは自然な現象だけど、人間は新しい秩序をつくって立ち直ることができる。つまり、秩序をつくるには今の脳みそが流れる信号を遮断するところから始まると、読み取ってみたんです。これが「エントロピー増大の法則」から学んだことです。

 

【 BUH 】:そういうことを日々良重さんに話しているんですね。

 

【植 原】:とりあえずハードディスクになってもらわないと。 「僕、何言ってたっけ?」というのを後から聞いて補ってくれるんです。

 

【 BUH 】:最初に仲が悪い、ケンカすると言っていたけど、とても仲がいいじゃないですか。今回はここらへんにして、次回はよしえさんのお話や今のKIGIについて聞いていきたいと思います。
 
 
第2回へつづく
 
 
 
取材:Hotchkiss 水口克夫/金子杏菜/久松陽一
編集:Hotchkiss 鈴木麻友美

キギ

株式会社DRAFTを経て、2012年にキギを共同設立。企業やブランド、ショップなどのアートディレクション、D-BROS等の商品デザイン、プロダクトブランドKIKOFや、洋服のブランドCACUMAの立ち上げなどあらゆるジャンルを横断しながら、グラフィックの新しいあり方を探し生み続けている。 
http://www.ki-gi.com http://www.kikof.jp http://www.cacuma.com