Menu

KIGI×BUH Talk:04

キギ

迷った時の2人の解決方法

BUHのキギの展示も残すところ2週間となりました。 前回のインタビューではデザイナーとしての成長について、よしえさんは亀、うえさんはうさぎ、なんてたとえがありましたね。 今回は、そんなお二人「キギ」の名前の由来について教えていただきました。

 

Talk:04

キギの由来と「木」の関係


 

迷った時の2人の解決方法

【 BUH 】:唐突ですが、よしえさん、筆をおく日って決めていたりするんですか?

 

【良 重】:「時間がきたら」っていうのもあるけど。「聞く」っていうのもある。

 

【一 同】:(笑)

 

【良 重】:もういいかなあ?って。

 

【植 原】:そう。迷った時のジャッジは人に任せるのが一番いいと思う。自分でジャッジすると、何日もかかるからね。

 

【 BUH 】:考えすぎたりやりすぎたりってありますからね。

 

【植 原】:さっき、「TORi」で何百枚もある古い写真から買うものを選んでいた時にね。(21世紀美術館すぐ近く、ホッチキスメンバーも仲良くしてもらっている家具屋さん兼カフェのTORiさん。アンティークの写真をたくさん販売しています。)
 
これどう?これどう?って僕がよしえさんに聞くんです。

 

【 BUH 】:で、よしえさんがないない、ないない、ってどんどんよけていく(笑)

 

【植 原】:そうするといい感じに絞られていく。またその逆もあって。

 

【 BUH 】:あの光景を見たときに、「あぁ2人はこういう風に仕事しているんだな」って垣間見ましたね。

 

【植 原】:あれが一番楽だからね。そしたら二人の最大公約数ができる。

 

【 BUH 】:どう?って、気兼ねなく聴ける相手がいるっていうのがすごいいい。お互いの価値観を認め合っている感じが。

 

【植 原】:認めていない部分もあるけどね(笑)だって僕、キン肉マン好きですけど、よしえさん好きじゃないじゃん。

 

【良 重】:見たことすらない。人がすすめられても素直に読まないことがあるんです(笑)

 

【植 原】:自分が考えなきゃいけないことがいっぱいあって悶々としている時に、よしえさんがもっと面倒臭いもの勧めたりすることもあるんですよ。

 

【一 同】:笑

 

【植 原】:「もういいから」ってなっちゃう。暇な時なら言われるとおり見るんですけどね。

 

【 BUH 】:今回、BUHの1階では2人が影響をうけた本、いわばふたりから世の中にたいしての「おすすめ」の本を展示販売しているわけですが。

 

【植 原】:売れ残ったら、新しくつくった僕たちのお店(「OUR FAVOURITE SHOP)で巡回展する?(笑)BUH×OFSって、面白いかも。

 

【 BUH 】:それいいですね(笑)

 

【良 重】:それいい。だってこの本たち、ほんとにおすすめなんだもん。

 

【植 原】:じゃあ逆にOFSでBUH展をやろう(笑)一冊ずつちゃんと本を紹介する。

 

あまりデッサンを学ばなかったからこそのよしえさんの作風

 

ribon_08

 リボンノート

 

【 BUH 】:全然話変わってもいいですか。よしえさんが描く「人」って表情が無いですよね。しかも正面か横顔。あえてなんですか?普通の人の感覚だと、もうちょっと表情を作ったりとかいろいろ考えると思うんです。

 

 

【良 重】:わりと単純な話、わたしデッサン力がないんです。あまりデッサン勉強してないから、あまり描けない。だから自ずとこうなる。というのはいいわけで、実際こういうのが好きなんでしょうね。映画とかみてても、正面と横っていう構図が好きなのです。例えば、アキ・カウリスマキ。あの人の映画は一枚の写真になっても絵になる。そういう絵作りがすごい気になるのです。

 

【植 原】:角度をつけると「感情」が入ってくるので。ちょっと横とか斜めっていう感情を抜きたいんです、よしえさんは。

 

【良 重】:あまり感情の激しいものは好きじゃない、何においても。例えば小説とかも激しいものは選ばない。おしなべて抑揚がないものが好きです。

 

【 BUH 】:でもそこにちょっとだけ温度があるというか。たとえば、この高野さんの本(「絶対安全剃刀」)とかも何かすごいことが起きるわけではないけど、ちょっとだけ感情のゆらぎだったり。

 

【良 重】:高野さんは本当に衝撃的だった。地元の山口大学を卒業して、筑波大学に研究生で行った時にこの本を教えてもらったのです。中学校くらいまでは漫画も読んでましたが、高校ぐらいから読んでなくて。大学卒業してこれに出会った時に本当にびっくりしたんです。こんな日常のことが、漫画になるんだ!と。ショッキングでしたね。ただ、この方多作じゃないのであまり見れない。

 

【 BUH 】:そうですね。

 

【良 重】:また最近ちょっと出てるじゃない?最近になって自分と高野さんがあまり年齢が変わらないことにさらに衝撃を受けた。要するに25歳くらいでたぶんこれを描いた。当時からこの方は天才だと思っていたけれど、最近になってこの歳でこれを描いたんだと改めて思って天才だと再認識しています。しかも絵が上手でいろんな書き方ができる。

 

【 BUH 】:また「ポーの一族」ですね。

 

【良 重】:「ベルサイユの薔薇」ね。中学生の時に読んで、これはもう大河ドラマだなぁと。ある程度の歴史を踏まえて作っている。「ポーの一族」と「風と木の歌」は私の中で大好きなおしゃれなおしゃれな漫画です。

 

【 BUH 】:綺麗ですよね。

 

【良 重】:絵も綺麗だし、外国の寄宿舎にもあこがれたりして。

 

【 BUH 】:これ、言葉も綺麗ですよね。

 

【良 重】:大人になってからは読んでないのでもう一回読みたいですね。

 

よしえさんの原体験、クリスマスの本

 

クリスマスの思い出_200

 

【良 重】:あとカポーティの「クリスマスの思い出」と「おじいさんの思い出」(この本は今回選んでないですけど)これは、おばあさん(いとこ)と子供、おじいさんと子供の話で。私3歳まではおじいちゃんとおばあちゃんに育てられた部分もあって、夏休みはずっと祖父母のとこに行っていた。だから、この本見た時は、「私の本だ」と。これは山本容子さんが絵をつけてるんだけど、私もこういう絵を描きたかったなぁって本当に思いましたね。だって、私の本だから(笑)

 

 

【 BUH 】:おじいさんってよしえさんの洋服のブランド「CACUMA」のモデルとなった覚馬さんですよね?

 

【良 重】:はい。私の祖父母と、この本のおじいさん、おばあさんが似てるってことではなく。子供とおじいさんとおばあさんの関係性が。最後ちょっと切なかったな、それも含めて好きです。あとはこの小川さん「ブラフマンの埋葬」も好きで、わたし無国籍な感じが好きなんですね。どこの国だかわからなくて、ちょっと不思議で。それで言うと、フランス映画「薬指の標本」も大好き。この映画も不思議ですごく素敵な映画なんです。その原作も小川さん。まず映画をみて、映像もよくて、かついちいち写真的なんです。太宰治さんの「女生徒」はとにかく言葉が好きでしたね。言葉づかいが、昭和の初めな感じで。
 
言葉でいうと「私の欲しいものリスト」が好き。フランス人の広告マンの人が書いた本で、ベストセラーだと知って買ってみたんだけど、文章がひとつひとつとても短い。その文章の感じが好きで、小説の構成も面白かったな。私は詩も好きで、でも難しい詩ではなく、とにかく易しい言葉で書かれているんだけど世界がフワーっと広がるような文章がすきです。

 

【 BUH 】:もしお互いこの中で一冊しか選べないってなったらどれを選びます?

 

【良 重】:一冊はとても選べないですね。「宇宙樹」は好きです。きっかけはテレビに竹村真一さんが出ていて、「木は立ち上がる水である」と言っていて、それは竹村さんの言葉ではなく誰かのフレーズなんだけど。想像したらワーっとイメージが広がって素敵だなって思ったんです。実際読んだらいきなり序文あたりのところに「山桜」の話が出てきた。「春になると山の神様が里に降りて来て田の神となって稲穂に宿る。その生命力が山から降りてくる兆しが山桜の開花だった」という描写がすごく好きだった。大和言葉という本来の日本の言葉ってもともとは文字がなくて口承で。それを漢字が入ってきたときに置き換えてしまったために意味が分かんなくなっちゃったものがたくさんあるんですって。本来は大和言葉って 「あ」も「い」も「う」も「え」も「お」も それぞれに意味があった。でも今の日本語ってそこに意味はないじゃない。そういうふうなこともこの本には書いてある。他にもたくさんこれまでわたしが興味のあったいろいろな“こと”が集められた本なんです。

 

 

宇宙樹_200

 

キギのなりたちを決定づけた「木」と名前の由来

 

【植 原】:ちょうどキギが出来た頃に、キギとしてのあり方や考え方をつめている時に、よしえさんがこの本(宇宙樹)を持っていたので、読みたくなって借りたんです。
 
まず、キギとしてのあり方や考え方なんですが・・・木というのは、地面があって根っこがあって、地面から出ていろんな養分とか水分とか吸い上げて、ひとつの幹となる。そして枝葉に分かれて、実が出来るという構造がクリエイションと一緒だと思ったんです。例えば・・・いろんな条件や技術、想いみたいなもの、いろんなもの全部吸い上げて一つのコンセプトとして世に出す。枝葉に分かれて実ができる、つまり実はデザインや商品。それが人々の手元に届き、人に何かしら影響し、新しい営みが生まれる。という循環がある。「キギ」っていう名前の由来は、そうやってクリエイションを木に例えて、ひとつひとつ丁寧に増やしていきたいっていうことからきています。で、そんなことを考えてる時にふと思ったのが、木を斜めから見たらどう見えるかっていう。円錐と逆さになった円錐がこうなってる図を想像した。

 

図
 
そして良重さんから借りた『宇宙樹』の本にある「木は立ち上がる水である」という考え方が腑に落ちたんですよね。竹村真一さんが引用した考え方もある種、「木を透明に見ている」というか。共鳴しましたね。

 

【 BUH 】:キギの最初の展示会のDMも円錐形が2つ水平に反転している形だったんですよね。

 

【植 原】:「集合と拡散」の図ですね。あれは、さっきの木の話と近いですが、みんな「くっつきたい」「つながりたい」って人間の気持ちがあるので、まず「集合」に向かう。そうすると結果「拡散」に向かう。拡散ってどういうことかと言うと拡散しすぎて動きがとまる。つまり「飽和という死に向かう」んです。これはひとつの現象だと思うのですが、人間とか木だけでなく、万物すべてがそうなっているのでは、と僕は仮説をたてたんです。想像してみると、ホシ(惑星や恒星)の生と死、会議の始まりと結論と社会への影響、料理の材料の集合と食事から分解されエネルギーへ、等々いろんなクリエイションはこの構造を持っていると思ったんです。
 
エントロピー増大の法則の例えでよく「部屋の散らかり」を例に挙げて説明されてますが、とどまることを知らない部屋の散らかりを片付けることができるのは人間だけ。動物や虫などの習性とは違い、意識的に状況を変化させることができるのは人間だけだといわれています。なんで人間は(自分は)クリエイションするのか?その理由を知りたい時期があったのですが、このことはひとつのヒントになりました。だから、いちばん好きな本を一冊選ぶならこの「生物と無生物のあいだ」ですね。今言ったことがこの本に書いてあるわけではないんだけど、この本が扉となって僕の想像力が膨らみました。

 

【 BUH 】:お互いの本のセレクト見て感想ってありますか?本から享受してるものがお互い違う感じがしますね。よしえさんは、言葉のきれいさとか感覚的なところ。うえさんは構造的で仕組みがあるものを探しているというか。

 

【良 重】:そうだね。

 

【植 原】:まあ漫画は仕組みじゃないけどね。

 

【良 重】:それは子供の時だからじゃない?

 

【植 原】:いや大人でもあるよ(笑)

 

【良 重】:えっ。

 

【植 原】:カイジと20世紀少年とか。

 

【 BUH 】:なるほど(笑)

 

アートは欲望である、うえさんの美術論

 

 

【植 原】:僕は、アートって「美術」って言うからややこしいわけで、「欲望学」だって思ってるんです。で、欲望は哲学なので、美術の見方が変わる。こんなグロいのが生まれる理由って何なんだろ、とか。よしえさんはそういうグロいの全部だめですけどね(笑)作る人の神経がおかしいんじゃないか、って思ったり。

 

【良 重】:ほんと無理。その人の人格、大丈夫か?とさえ思っちゃう(笑)

 

【植 原】:男の人って、それをなんでだろう、って深読みするんです。だからアートっておもしろい。

 

【 BUH 】:自分たち以外、誰のセレクトした本を読んでみたいと思います?

 

【植 原】:本って、fitするかしないかってあるから…達人に選んでほしい!

 

【良 重】:コンシェルジュてきな?

 

【植 原】:そうそう。俺の読んでいる本を見せて、「これだったらこれが良いよ!」って。

 

【 BUH 】:あ、そういう本屋ありますよね!北海道の砂川の本屋さん。自分の好みをメールすると、セレクトが届くんです。

 

【植 原】:あれはいいですね。

 

【 BUH 】:なるほど。今回はインタビュー最後にして、キギの名前の由来が聞けました(笑)長いインタビューありがとうございました。では、今開催中のキギ展の写真を紹介して、キギのインタビューをしめたいと思います。
 
 
次回のBUHの展示はなんとレストラン!詳細は追ってご報告します。
 
 
 
取材:Hotchkiss 水口克夫/金子杏菜/久松陽一
編集:Hotchkiss 鈴木麻友美
 
 
 

10923210_416942485173225_2018637385769521009_o

 

キギ

株式会社DRAFTを経て、2012年にキギを共同設立。企業やブランド、ショップなどのアートディレクション、D-BROS等の商品デザイン、プロダクトブランドKIKOFや、洋服のブランドCACUMAの立ち上げなどあらゆるジャンルを横断しながら、グラフィックの新しいあり方を探し生み続けている。
http://www.ki-gi.com http://www.kikof.jp http://www.cacuma.com