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スソアキコ×BUH Talk:02

スソアキコ

スソアキコさんのでき方

前回のインタビューではTHE文学少女だった幼少期のお話をおうかがいしました。娯楽のなかった(笑)石川県の故郷、そして夜の闇、お母様からの「禁止」いろんな要素がスソさんの感性をつくってきたのでした。今回は美大進学など今のお仕事につながるお話をうかがいます。

 

Talk:02 古墳好きは1日にしてならず、青春編

 


 

スカイライン「ケンメリ」への憧れから美大へ

 

【 BUH 】:「絵」への思い入れが強い子どもだったスソさんが、美大進学を意識したきっかけって何だったのでしょうか。

 

【ス ソ】:叔父が日産で車のデザインの仕事をやっていたんです。出身は津幡で県立の工業高校を出てすぐに日産に入社、内装のデザインを担当していました。その叔父が時々東京から遊びに来くると、なんというかものすごい「文化の風」を感じましたね。
 
当時日産スカイラインは「ケンメリ」で、ポスターも外国人が出ている、いかにもケンメリなポスターで、兄の部屋にもポスターが貼ってあったんです。その世界観に憧れましたねぇ。なんていうか自分のいる現実の田舎とまるっきり違う世界じゃないですか。「大人になったらアメリカに行くんだ」って。それが美大を意識したきっかけのひとつかも(笑)

 

【 BUH 】:それは、デザインじゃなくてもいいのでは(笑)

 

【ス ソ】:そうそうそうそう!それでデザイン云々ではなく、とにかく自分のいるその田舎くさいところが嫌で、「東京」っていうより「知らないところに行きたい」という気持ちが急に大きくなっていたのかもしれませんね。

 

【 BUH 】:やっぱり昔の金沢ってちょっと暗かったですしね。

 

【ス ソ】:めちゃくちゃ暗かった!

 

【 BUH 】:今とは何かがちがいますよね。

 

【ス ソ】:まったく違いますね。うちは内灘町で金沢と隣り合わせていましたが、親は出身が松任と津幡で、金沢市からも離れている場所。当時、金沢に住んでいる従兄弟がものすごくおしゃれに見えていましたねえ。遊びに行くとフォークギターとグランドピアノがあってビートルズ聴いてる、みたいな。かっこいい!みたいな(笑)

 

【 BUH 】:東京だけじゃなく金沢にもコンプレックスがあったわけですね(笑)

 

【ス ソ】:農家や漁師さんも身近にあって、うちの親はサラリーマンだったけど、でも元々は田舎育ちなわけです。そんな土地からケンメリの世界に憧れていた。車で突っ走って砂漠の先に夕日が見えるみたいな(笑) 自分がいる場所と自分が憧れる場所の「文化の違い」をすごく感じて、それが転じて美大に憧れたのかもしれない、つながっているというか。 だからこそ、そこで親に反対されたんです。

 

【 BUH 】:なぜ?

 

【ス ソ】:当時、ヒッピームーブメントの時代ですよ。親たちからすると、ヒッピーってまあ浮浪者のようなイメージがあって。金沢の街に遊びにいくとギターを弾いてるヒッピーがいるわけです。

 

【 BUH 】:いましたねえ。

 

【ス ソ】:「わあ!すごい」って私が言うと、親は「やめなさい!」「見ちゃダメ!」って(笑)ヒッピーがみんな美大生に見えたんでしょうね「美大生ってあんなことしていて楽しそう」転じて、「美大生=フリーダム」って思考回路に。

 

【 BUH 】:またダメって言われたんですね(笑)

 

【ス ソ】:実は、うちの兄も美大に行きたかったんです。兄もまた、日産でデザインをやっていた叔父の影響を受けていたんですね。 車のデザインしたいって思って、美大に進みたいと言ったら親にものすごく反対されて。 「長男がそんな絵なんか描くな」と。(笑)で、結局、ダムとかトンネル造る土木に進むんですけど。
 
そこで兄の挫折を隣で見ていた私は、兄が親に反対されて叶えられなかった夢を私が達成するんだ!みたいな。そこで燃えて、とにかく私は絶対絵をがんばる!と誓ったわけです。

 

【 BUH 】:でも美大はダメって言われていたんですよね?

 

【ス ソ】:もちろん反対されましたが、反抗期の力で乗り切りました(笑) 私は兄ほど反対されなかったというのもあり。まあ「女の子は好きにすれば」という親の諦めもあったんでしょう。

 

暗黒神話 – とにかくぶれないマンガの好み –

 

【 BUH 】:それで?

 

【ス ソ】:この本に出合いましたね。「暗黒神話」。 金美では「アニメ研修」って授業があって、そこで同級生の宮原嵩生くんがこれを持っていたんですね。アニメ研修って課題を友だちの家に泊まり込んでやったりするわけですが、相変わらず自分の家にはマンガがなかったので、いろんな友人の家に行ってはマンガを読みあさっていたんです(笑)

 

 

【 BUH 】:大学生になってもそうだったんですね(笑)

 

【ス ソ】:はい。それで宮原くんから、きっと好きだと思うということで「暗黒神話」や「AKIRA」を教えてもらった。大友克洋とか「ガロ」とか、あと「ねじ式」とかも全部そのアニメ研修の時に人の家で読んでハマったって感じです。

 

 

【 BUH 】:好みが一貫していますねえ。

 

【ス ソ】:確かにこうやって並べるとそうですね。

 

【 BUH 】:わかりやすい少女マンガとかは読んでいなかったんですか?

 

【ス ソ】:好きじゃなかったですね。当時は「キャンディ・キャンディ」とか、「はいからさんが通る」とか「エースをねらえ」、「ガラスの仮面」あたりが流行っていて、ひと通り読みましたが…あんまり…ハマらなかったですね(笑)
 
少女マンガってロマンス的なものが多くて興味がわかなかったのですが、唯一高階良子さんというホラーを描いてる女性のマンガ家がいて。

 

【 BUH 】:やっぱりホラー(笑)

 

【ス ソ】:その方の作品だけはおもしろいなと思いました。 あと大学に入った時にちょうど、「ヘタウマ」ブームだったんですね、世の中が。私は「ビックリハウス」とか湯村輝彦さんにすごくハマりましたね。この糸井重里×湯村輝彦の「情熱のペンギンごはん」も(笑)

 

 

「死」の存在の近さとマンガの好みから古墳好きへ?

 

【ス ソ】:そもそも小中高時代にさかのぼると、SFを読んでテレビで「タイムトラベラー(時をかける少女)」を観ていたんです。タイムトラベラーはすごく面白くて、あの体験の影響って大きかったと思います。その話たちのおかしな設定に洗脳されたというか(笑)

 

【 BUH 】:洗脳というか妄想系ですね。

 

【ス ソ】:あとは星新一もかたっぱしから読んでいましたね。

 

【 BUH 】:これは何ですか「円谷プロ怪獣図鑑」(笑)

 

【ス ソ】:これもね、うち民放が禁止だったんです。NHKしか観ちゃいけなくて。

 

【 BUH 】:また(笑)

 

【ス ソ】:ドリフも寺内貫太郎も観れなかったんです。唯一観ていた民放が「ウルトラマン」

 

【 BUH 】:ウルトラマンだけはよかったんですね。その価値判断わからない(笑)

 

【ス ソ】:なぜでしょうね。そしてすごくウルトラマンが好きだったんです。純粋に怪獣が好きだったのかもしれません。

 

【 BUH 】:民話が好きだったところとつながるのでは?

 

【ス ソ】:そうなんです!あとから考えると民話が取り込まれているんですよね。子どもが主人公で、いろんなことに巻き込まれていく設定がワクワクしてたのね。自分もそういう目に遭うかも!とか。

 

【 BUH 】:ただ悪い怪獣がでてきて倒すという単純な話じゃないわけですね。

 

【ス ソ】:そうです。ストーリーがあるんですよね。 地元の古い洞穴に何かがあるとか、それを子どもたちが追求していくとか、どこかダークな部分も結構ありました。あと、とにかく自分が当事者になるかもというのは確かにずっとあったんです。

 

【 BUH 】:土地がら、日本海に面しているので「拉致」が身近な存在わけですね。

 

【ス ソ】:子どもだけで海に行くなと言われていましたね。私が生まれる10年前から6年前ぐらいまで、内灘闘争という学生運動があったんです。アメリカ軍が内灘町に試射場を持っていて。それに反対する運動で、五木寛之とかも来てたんです。結局は廃止になったんだけど、弾薬庫とか残ってたし、砂浜にピストルが落ちていてそれを拾って遊んだりもして。そういう大人の怖い、リアルな事情の痕跡があった場所。 倉庫をみんなの遊び場にしたり、そこに住み着いているホームレスの方を観察したりもしていましたね。なので「危ない」ということが身近にあったんです。

 

【 BUH 】:そうなんです、想像力大事ですよね。子どもなりの危険に対しての想像力がないと。

 

【ス ソ】:実際に小学生の時は同級生のお父さんが漁師で、海が荒れてね、船が沈んで亡くなってしまう、ということがたまにあった。私は学級委員をやっていて、クラスを代表してお葬式に行ったことも何度かあったんです。それで棺で横になるご遺体にお参りするようにと言われたりとか、お父さんを亡くした友達がそこで白い着物を着せられているのを見たりして….

 

【 BUH 】:え、子どもが?

 

【ス ソ】:そういう風習があったんでしょうね。ともかく死の世界が身近にあった。

 

【 BUH 】:そこから古墳や埴輪に興味がむかったんですか?

 

【ス ソ】:それがだいぶ後なんですよね。美大時代もなかったし。会社を辞めてフリーになったあとに、美術仲間の人たちと吞んでいる時に、「暗黒神話」ってあったよね、って話から自分の中に眠っていた古代熱が再燃するんです。そこからずんずんと活動が始まってしまったんです。

 

【 BUH 】:なるほど。そのあたりのお話は次回詳しくおうかがいしましょう。

 

 

取材:Hotchkiss 水口克夫/金子杏菜

編集:Hotchkiss 鈴木麻友美

スソアキコ

帽子作家/イラストレーター
石川県生まれ。東京在住。金沢美術工芸大学商業デザイン科卒業。資生堂宣伝部を経て、帽子デザイナー平田暁夫氏に師事し、1991年よりフリーランスとして活動。2001年より2009年まで美術同人誌『四月と十月』に参加。同人仲間と古墳部活動を行い同人誌に連載(10回で終了)。2007年頃より「ひとり古墳部」を開始し、2008年よりウェブサイト『ほぼ日刊イトイ新聞』にて連載を開始する。
http://www.1101.com/kofun/ http://www.suso.biz/