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アニメーション実験室インタビュー

冠木佐和子/姫田真武/水江未来

私たちのアニメーション【後編】

インタビュー前編では、「じゃない方アニメーション」のみなさんに関係性をうかがいました。お兄さん的な水江さん、ぶっとんだ冠木さん、そして底知れない何かを抱えている姫田さんというキャラクターが浮きぼりになってきました(笑)後編では、お三方が影響を受けた本や作品についてうかがいます。それぞれの選書99冊は、BUHで展示販売されていますよ!

バーバパパはメタモルフォーゼのルーツ

【 BUH 】:お話をうかがいはじめてからすでに2時間近くなりますが、みなさん大丈夫ですか?飽きてません?(笑)
 
(ここで冠木さんがソワソワしはじめる)
 

【水 江】:彼女は不思議な人なので、ある海外の映画祭でインタビューされたとき、何を質問されても「I love you」しか答えなかったり、上映後に登壇して挨拶するときにはレザーフェイスの被り物をして素顔を隠したり。とにかく奇抜なパフォーマンスで観客を魅了していました。ちょっとクレイジーな日本の女の子と認識されたと思います。
 

【一 同】:(爆笑)
 

【冠 木】:奇抜な事をしているつもりは無くて。
ただ英語ができないので、わかる言葉だけ言っていたっていう。
 

【 BUH 】:なるほど…(絶句)
平常運転ということですね、では99冊の本のお話にうつりましょう。どうですか?お互いの99冊を見て。
 

【冠 木】:「なるほどな」って感じですね。水江さんは『バーバパパ』が3冊もある(笑)
 

【姫 田】:本人がバーバパパに似てますからね。
 

【一 同】:(笑)
 

【 BUH 】:それで言うと、『ウォーリーを探せ』なんて、細かい感じが映像の作風と似ている。
 

【水 江】:僕はそもそもメタモルフォーゼ(変身、変態)が好きなんです。
メタモルフォーゼの面白さを最初に覚えたのが「バーバパパ」ですかね。
 

【 BUH 】:なるほど。
 

【水 江】:『バーバパパのいえさがし』はですね、まずバーバパパって普通の人間の家の庭に、自分の家を建てて暮らしているんです。バーバパパひとりが住むための部屋だったのが、バーバママが現れて2人暮らしして、そして子供たちが大量に産まれて、部屋がぎゅうぎゅうになる。で、家が壊れて、もっと広い物件を探しにいく話。でも適当な物件が見つからず、町の外にでて、自分の体にセメントを塗りたくって家を作るんです。バーバパパたちはメタモルフォーゼ出来るから、その形に添って家の外壁が出来ていく。そうして、どんどん部屋をつくるんですが、それぞれが趣味の部屋になっていて…、そういうのがおもしろい。
 

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【水 江】:『バーバパパの大サーカス』も、彼らがメタモルフォーゼしてジェットコースターになったりとか。要するに自分たちで作っちゃうっていうのがすごいワクワクした。子どもの時にやった、レゴブロックやプラレールとかもそうですが、自分で世界を形成する「ごっこ遊び」っていいなぁと思いましたね。
 

【 BUH 】:完全に「クリエイション」のきっかけですね。
 

【水 江】:そうですね。
 

【 BUH 】:『ウォーリーを探せ』も?
 

【水 江】:ウォーリーはこまごま系、今の細胞系に行ったきっかけかもしれません。
 

【 BUH 】:そう考えると選書全体を見てもメタモルフォーゼ系多いし一貫していますね。
 

【水 江】:藤子不二雄も大好きでその中でも21エモンが一番好き。みんなそう思わない?
「21エモン」は全4巻の構成になっていて、前半は、主人公の家族が経営するホテルに様々な宇宙人が泊まりに来て、そこでなんかドタバタ劇が起こるっていう定型的な一話完結のドラマなんですが、後半は、主人公たちが宇宙へ旅立ち、一話完結ではなく、連続ドラマものになって、話のスケールが大きくなっていくんです。死であったり、孤独、人間の闇なども描かれて、だんだんダークな要素も入ってくる。それが良いですね。
 

【 BUH 】:家で仕事してないときって、何してますか?
 

【水 江】:家では仕事しかしてないなぁ。映画は良く見に行きますよ。
 

【 BUH 】:好きな映画は?
 

【水 江】:最近のだと、MCU(マーベルシネマティックユニバース)シリーズは全部観てますよ。『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』とか『アントマン』とか面白いですよ。
何よりも『スターウォーズ』が大好きで、シリーズの中ではやっぱり『新たなる希望』が一番好きですね。あと、マシュー・ヴォ―ン監督の作品も好きですね。特に『キングスマン』は最高でした。復活したシャマラン監督の『ヴィジット』も感動しました。あ、観てるジャンルが偏ってますね(笑)
 

【一 同】:(笑)
 

【 BUH 】:続きまして、冠木さんの選書にうつりましょう。
 

禁煙しないけど禁煙本

 

【姫 田】:まさかの『リセット禁煙』と『禁煙バトルロワイヤル』。えーっと、これで禁煙したの?
 

【冠 木】:『リセット禁煙』で禁煙を決意し、『禁煙バトルロワイヤル』でその決意を砕かれました。
ちなみに『リセット禁煙』は禁煙を推奨する本で、『禁煙バトルロワイヤル』は喫煙者である爆笑問題の太田さんが、喫煙の素晴らしさについてを禁煙を推奨する医師とトークバトルする本です。煙草はやめたいとずっと思っていて、禁煙には何回もチャレンジしているのですが、煙草を吸わずに作ったアニメーション作品は一個もないです。禁煙は未だに目下の目標です。
 

【 BUH 】:なるほど、どちらも影響を受けていると(笑)作品づくりの上で本や映画から影響を受けたりってありますか?
 

【冠 木】:自分のアニメーションは、ほぼノンフィクション。実体験をもとにしたものが多いので、トレースしたりオマージュしたりするものはあまりありません。ただ予備校の先輩だったシシヤマザキさんがとにかく大好きすぎて、ストーカーっぽい行為を当時よく働いていました。
あと『痛々しいラブ』は、あの線画の感じなど絵においては影響を受けていると思います。中学生だったから、こういう男女のイザコザにすごく憧れましたし。
 

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【 BUH 】:原体験的な本は?
 

【冠 木】:小さい時に字が読めなくて、クレヨンしんちゃん6巻をひたすらずっと読んでましたね、おばあちゃんから送られてきて。しんちゃんがコンドームに息を入れて風船にするシーンとか。
 

【 BUH 】:そんなシーンあるんですか!
 

【冠 木】:みさえとひろしがセックスしてるところにしんちゃんが入ってきちゃったりとかもあります。
 

【 BUH 】:サザエさんもマンガ版はちょっと過激だったりしますしね…。
では冠木さんの好きな映画は?
 

【冠 木】:確かに本より映画のほうが好きなものを選ぶのは楽かも。ぶっちゃけ、アニメーションより実写映像が好きです。鉄板ですが、「2001年宇宙の旅」「時計じかけのオレンジ」「パルプフィクション」「ホーリー・マウンテン」などが特に好きです。
 

LINEから生まれた「夏のゲロ」

 

【 BUH 】:冠木さんの作品は、映画的に歌や曲が連動しているものも多いですよね?映像とストーリーの兼ね合いってどうしていますか。
 

【冠 木】:気にせずかぶせます。
 

【 BUH 】:では、『冬のゲロは夏の肴』も?
 

【冠 木】:これは制作期間は2か月間くらいなんですが、まずタイトルが浮んだんです。タイトルありきでつくりたい作品のイメージもあり、知り合いの作曲家にずっと「ゲロの曲つくってください」って頼んでました。「ゲロを多めで」とお願いして。で曲が出来たタイミングで映像をつくりはじめたと。
 

【 BUH 】:どうやったらこのタイトルが浮んだんでしょう(笑)
 

【冠 木】:友だちとLINEしてて「あぁ、夏のゲロってのはあれだねえ」みたいな話になって、それを文字って。ことわざとか慣用句みたいなもんですよ。
 

【一 同】:え~。
 

【 BUH 】:皆さん、音楽があがるまで不安だったりしませんか?
 

【水 江】:この辺は、一緒にやる音楽家の方の感性を信じているので、自分のイメージ通りにならない、自分のイメージを斜め上から超えてくることを楽しみにしながら、いつも制作していますよ
 

【 BUH 】:水江さんも音楽が先?
 

【水 江】:先の場合もありますが、『WONDER』という作品に関しては、音楽が後です。先にアニメーションを全て作った後に、こういうイメージで作って欲しいとお願いをして、あとは音楽家の方が咀嚼し想像し音楽を組み立てていく。音楽のことは音楽の人が一番わかるから、最終的には委ねたいと思っています。それがコラボレーションする面白さでもありますよね。音楽の人が自分の伝えたイメージをどう解釈するかっていう楽しみ。
 

【 BUH 】:なるほど。では姫田さんの選書にうつりましょう。
 

【水 江】:「家族喰い」…(絶句)
 

【 BUH 】:尼崎連続殺人事件の顛末が書かれた本ですよね。容疑者が自殺してしまった事件。
 

【 BUH 】:園子温で映画化されそうな話ですよね。
 

【姫 田】:僕はもともとそんなに本を読まないんです。でも最近読んだ中で強烈だったんで入れました。こういう洗脳ものとかに興味があるんですよね。
 

【冠 木】:サイコパス…(小声)
 

【 BUH 】:えっ、姫田さんがサイコパスぽいってことですか?(笑)
 

【冠 木】:姫田さんは、サイコパスの匂いがすごくするんです。目が笑っていなかったり、スイッチの入り方もちょっとおかしい。
 

【姫 田】:人を殺したりはしませんよ!選書で言うととにかく長新太が好きです。自分は古くから影響を受けたものとかルーツっぽいものはあまりなくて、長新太が好きになったのも、とにかく大好きな『おかあさんといっしょ』も大人になってから出合ったんですけどね。
 

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【 BUH 】:『たま』。おー…いいですね。
 

【姫 田】:元々は小さい時に親が聞いていて、「怖い歌だな」と思っていたんですが、のちのち大学生になって自分も聴き始めた。
 

【水 江】:たま、いいよね~。
 

【 BUH 】:ダークな感じも姫田さんぽいかも。
 

【姫 田】:これはたまのパーカッショニストの石川浩司さんが書いている本で、たまの売れる前と売れた後や解散した後のことも書かれています。
 

【水 江】:僕、『たまの映画』というドキュメンタリー映画を観にいって、パスカルズが出てるのを見て、それがきかっけで『WONDER』の音楽はパスカルズにやってもらいたいって思ったんです。
 

【 BUH 】:そうなのですね。ちなみに姫田さんの好きな映画は?
 

【姫 田】:「レント」と「地獄でなぜ悪い」ですかね。
 

【 BUH 】:やっぱり。園子温好きなんですね(笑)しかし、明るいと暗いの落差がすごいですね。そのあたりがサイコパスっぽい由縁でしょうか(笑)姫田さんは前回『おかあさんと一緒』への愛を語っていただきましたが、絵本もたくさん選ばれていますねえ。
 

【冠 木】:いい人ぶってません?
 

【一 同】:(笑)
 

寄せ集めはアニメーションの醍醐味

 

【 BUH 】:姫田さんの作品の曲はご自身で歌っていますが、歌と映像はどちらが先?
 

【姫 田】:声ベースの歌だけ先に。いつも編曲をお願いしている友人に作曲を依頼することもありますが、だいたい歌詞とメインとなるメロディーが先にあります。
 

【 BUH 】:コピーライターとアートディレクターの関係みたいですよね。デザイナーからコピーライターに「ここだけ変えて」と言うのはちがう、みたいな。姫田さんの作品で自分が出る出ないの線引きってなんでしょう?
 

【姫 田】:明快には分けていません。単純にこれは「THEアニメーションなんです」って言い切りたいときは自分が出ないようにはしますが。自分が出る出ないに関係なくアニメーションとして上映できるもの、最初から最後まで完結してるものがつくりたいと常々思っています。人に見せる上で自分が出たいと思うこともあって、実際に生で歌いながら上映することもあります。アニメーションの別の楽しみ方、見せ方としてできる限り続けていきたいです。次の新作も自分は出ませんが、上映しながら歌ったりはするつもりです。新作では1曲女の人に歌ってもらっています。アラブ歌謡とか歌ってる方です。
 

【 BUH 】:今回BUHで展示する企画も姫田さんの作品にある『自分さがしごっこ』の作品を見たのがきっかけだったのですが、もともと二次元と三次元がまじったものに興味を持ったきっかけってありますか?
 

【姫 田】:それもやっぱり『おかあさんといっしょ』(笑)歌いたいし描きたいし自分も出たいし、そういう、いろんな寄せ集めができるのがアニメーションの醍醐味でもあります。
 

【 BUH 】:今回の展示企画に関して、みなさんどんな方たちに観てもらいたいですか?
 

【冠 木】:子ども!(即答)
 

【 BUH 】:うそ!(笑)
 

【水 江】:冠木さんの作品は子どもはトラウマになるよ。
 

【冠 木】:子どもが楽しんでくれる作品を作りたいんです、大人よりも。
実はずーっと。そんないけないもの描いてるって意識はないんですよ、なんだろう川で拾ったエロ本ぐらいの感覚です。
 

【一 同】:(笑)
 

【水 江】:そういうのを観て性の目覚めになることもありますからね。小学生男子とか(笑)しずかちゃんの入浴シーンで恥ずかしくて寝たふりするみたいな。
 

【 BUH 】:姫田さんは?
 

【姫 田】:もう幅広い人に観ていただきたいです。子どもから大人まで楽しんでもらいたい。しばらくオリジナル出していなかったので。
たまに子どもに見せて感想もらうようにしているんですが、子どもは「こういうのが好き」ってなんとなくわかってくるんです。人間っぽさだったり、単純にビョーーンみたいなわかりやすさだったり、そういうのを感覚値としてわかっていくと、子どもに対して「媚びて」作ったっていいかなとも思います。
 

【 BUH 】:水江さんは?
 

【水 江】:僕の作品は言語がないのでそれこそお年寄りから子どもまで。全世界の人たちに、犬や猫も…
 

【 BUH 】:犬猫!
 

【水 江】:家畜とか、もう本当に目がある人全員に観てもらいたいですね(笑)今日はドッグデーだから愛犬と一緒に観てもらいましょう、とか。ららぽーと豊洲とかで。今日は鳥の日、とか。
 

【 BUH 】:BUHでやりましょうか、床が糞だらけになるでしょうけど(笑)
それでは、アニメーション実験室のインタビューはこれで終わりです。現在開催中の「アニメーション実験室」では、この個性的な3人の作家さんの映像が展示されると共に、映像に入れる空間となっております!是非皆様お越しください。
 
 
取材:Hotchkiss 鈴木麻友美/金子杏菜/上村真由
編集:Hotchkiss 鈴木麻友美
 
 
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